出島への手紙を頼まれ、しばらく遠出をすることになった。
その前に、水の道場へ立ち寄る。
稽古の内容は、その場で頭目が決める。
何を基準に選んでいるのかは、いまだによく分からない。
今回は、どんぐりを渡された。
「指で弾け」
床に座り、三歩先に置かれた茶碗を狙う。
ひたすら弾く。
集中するので、思った以上に疲れる。
気分転換に外へ出て、池をぼんやり眺めた。
ふと、足元に平たい石が目に入る。
(昔、よくやったな)
石を拾い、水面へ向かって投げた。
ポーン。
ポン。
ポン。
ポンッ。
石は三度跳ね、静かに沈んでいった。
子供のころ、何度跳ねるか競い合った“水切り”だ。
石の選び方や投げ方を、子供なりに研究したものだった。
そのとき、背後から頭目の声がした。
「石を池の向こうまで飛ばしてみろ」
言われるまま投げるが、当然届かない。
頭目は懐から手拭いを取り出した。
中央に石を挟み、二つ折りにする。
水車のようにくるくると回し、握った両端の片方を離す。
石は勢いよく飛び、池を越えていった。
「礫はな――」
頭目が言う。
「指で弾く。
投げて飛ばす。
紐などで放つ」
「いくつか方法がある」
そう言って、
「それぞれ修練するとよい」
須田は、石という単純なものの奥に、
まだ知らぬ世界があると感じた。
その日から、石の稽古が始まった。
枝から紐でつるした竹筒を狙って、石を投げる。
当たれば竹筒が揺れる。
揺れる竹筒を、また狙う。
これが思いのほか難しい。
(そういえば風の道場でも、似た稽古をやらされたな)
鎖分銅で、揺れる的を打つ。
距離は近かったが、要領は同じだ。
そんなことを思いながら石を投げ続け、
やがて腕が上がらなくなった。
ーー 続く ーー
