【離放の章】第八話 構えて待つ

ロベルに礼を言い、須田は出島を出た。

カタパルトは道具屋にも並ぶという。
いずれまた手に取ることもあるだろう。

だが胸に残っているのは、
「放つな。離せ。」の一言だった。

足は自然と東方街へ向いていた。

以前あの街で、境界の桃源郷へ迷い込んだことがある。
あのときも、歩きの何かが変わった。

礫もまた、どこかで変わるのではないか。

須田は黙って歩いた。

道すがら、ただ礫を打つのではなく、
森にどんな変化が起こるのかを観察した。

礫を放てば、
ガサ、と葉が鳴る。

当然、森の気配は揺れる。

(離せば、何が変わるのか……)

やがて東方街に着くと、須田は道具屋をのぞいた。
カタパルトは見当たらなかったが、興味深い話を聞いた。

港の櫓には常夜灯があり、
警護のために石弓が据えられているという。

須田は櫓へ向かった。

梯子を上ると、番の男が振り向いた。

「石弓というものを、見せてもらえますか。」

男はうなずいた。

「上がってきな。」

櫓の上に、それはあった。

一本の胴木に、横へ広がる弓が付いている。

使うときは弦を引き、留め金で固定し、
溝に石を載せる。

放つときは、引き金を引くだけだ。

番の男が言う。

「大きいからな、持ち歩きには向かねえ。
 だが、一度張れば、構えて待てる。」

須田は黙って見つめた。

海風が弦をわずかに揺らした。

―― 続く ――

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