ロベルに礼を言い、須田は出島を出た。
カタパルトは道具屋にも並ぶという。
いずれまた手に取ることもあるだろう。
だが胸に残っているのは、
「放つな。離せ。」の一言だった。
足は自然と東方街へ向いていた。
以前あの街で、境界の桃源郷へ迷い込んだことがある。
あのときも、歩きの何かが変わった。
礫もまた、どこかで変わるのではないか。
須田は黙って歩いた。
道すがら、ただ礫を打つのではなく、
森にどんな変化が起こるのかを観察した。
礫を放てば、
ガサ、と葉が鳴る。
当然、森の気配は揺れる。
(離せば、何が変わるのか……)
やがて東方街に着くと、須田は道具屋をのぞいた。
カタパルトは見当たらなかったが、興味深い話を聞いた。
港の櫓には常夜灯があり、
警護のために石弓が据えられているという。
須田は櫓へ向かった。
梯子を上ると、番の男が振り向いた。
「石弓というものを、見せてもらえますか。」
男はうなずいた。
「上がってきな。」
櫓の上に、それはあった。
一本の胴木に、横へ広がる弓が付いている。
使うときは弦を引き、留め金で固定し、
溝に石を載せる。
放つときは、引き金を引くだけだ。
番の男が言う。
「大きいからな、持ち歩きには向かねえ。
だが、一度張れば、構えて待てる。」
須田は黙って見つめた。
海風が弦をわずかに揺らした。
―― 続く ――
