【絆響の章】 第二話 境界の音

館長がなんで法螺貝を渡したのか、わからない。
吹き方を教えてくれるわけでもない。

そういえば――
忍びの道場の頭目が言っていた。

「忍びが連絡を取るとき、法螺貝は便利だ」

狼煙も使うが、あれは“見ていなければ”気づけない。
その点、音は聞こえる。
何かしていても、耳は働く。

狼煙が良いときもある。
法螺貝が良いときもある。
状況しだいだ。

(……水の道場へ行って聞いてみるか)

そう思い、須田は道場を出た。

歩くときは、鎖分銅の霞打ち。

三歩進み、霞。――ガシャ。
三歩進み、霞。――ガシャ。
三歩進み、霞。――ガシャ。

つねに鎖分銅の修練を続けた。

いつもの山だ。
空気が変わったと思った瞬間、
須田は境界の里に立っていた。

その時、法螺貝の音。

ぶぅーうっうーーー
ぷぉーおっおーーーーー

低い乙音。
高い甲音。

遠くの木の上に、すずめ天狗の三寸坊が見えた。
法螺貝を吹いている。

やがて、すずめ天狗たちが集まってくる。
集合の合図なのか。

また低い乙音。
そのとき、須田の肩から下げた法螺貝が微かに振動した。
共鳴しているのか。

須田も吹いてみることにした。

すーーーー。
音が出ない。

大きく息を吸って、力いっぱい吹く。

すーーーー。

息を吐ききって苦しくなった。
大きく息を吸った瞬間――

須田は、元の山にいた。