水の道場へ着いた。
いつもながら、気配が薄いところだ。
道場に入り、頭目に挨拶をする。
「鎖の音が響いていたので須田とわかったよ。
相変わらず励んでいるのだな」
「飯綱山は登ったか?」
初めて聞く山だ。
「いえ」
「行ってみるとよいぞ。
ところで、今日は何か学びにきたか?」
「はい。
法螺貝の吹き方を」
頭目がじっと見つめてくる。
何かを見透かす目だ。
「……嘘のつき方か?
忍びには大事だな」
(ん?
法螺を吹くといえば、大ウソをつくことか!)
「いえ。
法螺貝の音の出し方です」
「法螺貝は“立てる”という。
まーどっちでもよいか。
貝を持って外に出ろ」
外に出ると、頭目は法螺貝を手に取り、
音の出し方を教えてくれた。
唇の真ん中ではなく、
多くは左唇の端に吹き口を当てる。
これを「歌口」というらしい。
頭目は低い音、高い音、さらに高い音の
三音を鳴らして見せた。
本来は五音出るという。
その音の組み合わせで、
忍びは合図をするのだという。
そして、いくつかの合図を教わった。
音が出るわけではないが、
聞けば状況がわかるようになっている。

「……あとは修練だ」
そう言って、頭目は話を終わらせた。
風の道場もそうだが、水の道場も多くは語らない。
あとは気付け、ということだ。
飯綱山。
行ってみるか。
―― 続く ――
