飯綱山は信州(長野県)にある。
日本橋を出て、中山道を北へ。
軽井沢の追分で北国街道に入り、信州へ向かう。
歩けば十日ほどの道のりだ。
三歩進んで、霞。
三歩進んで、霞。
須田はいつものように、鎖分銅の修練をしながら歩く。
すれ違う旅人がいるときは、鎖を握り、普通に歩く。
賊と思われると面倒だからだ。
朝昼晩と、法螺貝を立てることも続けた。
信州に入り、山道を歩いていると、法螺貝の音。
ボォー・ヒィー・ボォー
案内の貝だな。
勇気を出して、返してみるか。
ボォー・ヒィー・ボォー
ちゃんと出てはいないが、音が出た。
ボォー・ヒィー・ボォー・ヒィー・ボォー・ヒィー
出会いの貝だ。
これも何かの縁か。
行ってみるか。
音のした方へしばらく歩くと、
山伏と巫女が二人、休憩していた。
会釈すると、山伏が気さくに声をかけてきた。
「どこへ行くんだい?」
「飯綱山へ」
「何しに?」
「知り合いが、行ってみろと」
「はは、何もないところだがな。
俺たちは戸隠へ向かってる。
行き先は近いな」
簡単に自己紹介があった。
山伏が権之助(ごんのすけ)。
巫女は千波(ちなみ)と沙耶(さや)。
三人で口寄せをしながら旅をしているらしい。
「もう少し行くと宿がある。
今日はそこに泊まらないか?」
歩き続けてもよかったが、
これも何かの縁だろう。
急ぐ旅でもない。
泊まることにした。

宿屋につくと、権之助はどこかへ行った。
どうやら口寄せの客を探しに行ったようだ。
しばらくすると戻ってきて、
「明日の朝、庄屋の旦那が来るそうだ」
と言った。
口寄せちょっと興味あるな。
