山の風がやわらかく葉をゆらす昼下がり。
いつもの森に、ひときわ澄んだ音が響きわたりました。
「ぶぉーーー……」
高い木の上。
枝にちょこんと立っているのは、小さな山伏天狗――三寸坊。
両手でしっかり抱えた法螺貝から放たれる音は、
ただの音ではありません。
それは「集まれ」の合図。
里と仲間をつなぐ、やさしい呼び声です。
その音を聞いた瞬間――
ガサッ
サワサワッ
森のあちこちで気配が動きました。
「呼ばれたな」
黒装束の半三が、木陰からひょいっと姿を現します。
静かに現れるのは得意技。でも今日はちょっと嬉しそう。
「三寸坊の笛(ほら貝)だ!」
青い着物の平三が、枝から枝へとぴょんぴょん跳びながら駆けてきます。
こういう“みんなが集まる合図”が大好きなのです。
「また何か始まるのかねぇ」
少し遅れて、辰三郎もゆっくり登場。
落ち着いた顔をしながらも、目はしっかりワクワクしています。
やがて四羽は、大きな木のまわりに自然と集まりました。
三寸坊は最後にもう一度、
短く、やわらかく法螺貝を鳴らします。
「ぷぉっ」
それは
戦の合図でも
危険の知らせでもなく
「みんな、いるね?」
という確認の音。
森の中で、仲間がそろう。
それだけで、ちょっと心があたたかくなる時間。
三寸坊の法螺貝は、
今日も里と仲間をつなぐ音を運んでいるのです。


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