隠し武器なのになぜ音がでる万力鎖!?

隠し武器のメリットは携帯性と秘匿性になります。万力鎖は携帯に便利ですが、秘匿の面では音が出るので微妙ではないでしょうか。
忍者の武器として広まりつつありますが、屋根裏で鎖の「ジャリ」音がしたら「くせもの~!」と人が集まって来るでしょう。

そんな音をどう考えるか考察してみたいと思います。

音が出ないように使う

正木流では万力鎖用の鎖袋があり、消音効果があります。また、鎖袋は絡め技で手首などに擦り傷など怪我をさせないメリットもあります。鎖袋を使うと音が全くしない訳ではありません。鎖の一つ一つを袋に縫い付ければ、さらに音がしなくなります。しかし、鎖袋を使うとかさばり、手の中に上手く入らない事があります。

正木流は鎖が相手に見えないように使う事が多く、合掌した構えを多用し、手の中に鎖を納めます。鎖袋を使うと可動性が悪くなり納めるのが結構難しくなります。また、手の膨らみも大きいです。

鎖袋と万力鎖
鎖袋使用
万力鎖のみ

もう一つ音の出ない方法として、鎖同士がぶつからないように、張った状態で使う方法があります。例えば、張った状態で振り回し、常にゆるみを無くせば鎖の音はありません。しかし、風を切る音がでるのが欠点です。

暗い中で敵を察知する刀を使った「座探り」の技は有名ですが、万力鎖を使った座探りがあります。音が出たら敵に居場所を知られる為、意味がありません。刀の座探りは「田舎ザムライ」さんの動画を参考にしてください。

発想の転換

道場では「固定概念を持たず、臨機応変になれ」と指導を受けます。鎖は刀や棒と違い形状が変化する為、そのような発想や対応が大事になります。

そもそも開祖が門前を血で汚す事なく制圧出来る術として万力鎖術を考案した説もあります。万力鎖は警護の捕具や護身具の役割が大きいです。捕具は正々堂々なイメージですが、隠し武器はちょっとダークなイメージになってしまいます。良いイメージの道具として発想を変えていくと万力鎖普及への未来は明るいでしょう。

また、音を出さないのではなく、音が出る、存在感を音で示す発想の転換をしてみてはどうでしょう。存在感を出し、音も出るといえば鎖をファッションに取り入れたウォレットチェーンなどは隠さず見せる発想の転換です。

魔除けの音

音は魔除け効果が期待できます。

もともと万力鎖は魔除け効果のある秘器と云われています。

お守りの鈴や神社の大きな鈴など、鈴を鳴らすことで悪を祓い、魔を滅するとされています。また、風鈴も魔除け厄除けとして軒先に吊るして、音の聞こえる範囲が魔除け厄除けになるとされていました。

万力鎖の音もお守りの鈴と同様に魔除けとして考えると良いのではないでしょうか。また、鎖を振り回す姿は見ようによってはお祓いをしている動作と音に感じませんか?

僧がもつ錫杖は地面に着くと頭部の輪の遊環(ゆかん)がぶつかり音がなりますが、その音は山の修行で獣よけとなり、托鉢などで来訪を知らせる役割になります。鎖の音も個性の表現や山の動物よけと考えると良いのではないでしょうか。また、錫杖の妙音によって修行者の煩悩を打破し、仏性の目覚めを促すという効果もあるとの事。万力鎖を黙々と練習していると確かに煩悩はなくなるような気がします。

代表が名和先生より頂いた錫杖。

霞(かすみ)

正木流では合掌した構からまっすぐ万力鎖を打ち出す「霞」の技が重視されます。中島派では「霞」が出来るようになると免許となります。免許は動作を見ず、鎖の音で判断されます。

まとめ

隠し持つ表現は陰湿な雰囲気を醸し出しますが、万力鎖は十手と同じ捕具として捉えれば正義の味方感がでます。鎖の音が魔除けや獣よけとして身を守る手段であったり、鎖と音が個性を示すものとしてアピールする手段にもなります。

正木流は鎖を専門に使う流派なので、鎖袋や鎖を張って使うなどの他、音を出さないスキルは「日々の修練」と一言で完結してしまいますが、発想を変えるとちょっと鎖を持つのが楽しくなると思います。

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