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正木流中島派鎖術保存会

正木流中島派鎖術保存会は万力鎖、十手、捕縄、鎖鎌、その他の隠し武器術を継承し保存する伝統武術団体です。
当会の代表、中島通雄は名和弓雄宗家(正木流万力鎖術、江戸町方十手捕縄扱い様)の許しを得て道場を設立しており、その後、十手術や手之内や隠し武器など各地で調査や交流により習得した技法を別伝として並伝しています。 

会はアットホームな雰囲気で怖くありません。
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正木流万力鎖術について

正木流万(萬)力鎖術は宝暦年間(1750年代)に正木利充により創始されました。正木利充は美濃国大垣藩士で、古藤田一刀流剣術、先意流薙刀術を修め、後に正木一刀流、正木流万力鎖術を開きました。万力鎖は鎖の両端に短冊状の分銅を付けた全長2尺3寸程のものです。他流では鎖術、玉鎖術、鎖十手術、両分銅術、分銅鎖術などの名称があります。

万力鎖術創始の説

万力鎖術創始の経緯は二説あり、ひとつは「大垣藩が江戸城大手門の警備を命ぜられた事に端を発する。利充は、大手門警備中に不意に乱心者が来た場合の対処に腐心し、刀により門前を血で汚す事なく制圧出来る術として万力鎖術を考案した」(撃剣叢談)。また もうひとつは、大垣に伝わるもので「利充が60余歳の頃、秋葉権現の霊夢を得て案出した」とあります(武功論)。

万力鎖の携帯方法

万力鎖の携帯は見えないように衣類などに隠します。基本は右腰へ帯から下げ袴の内側に隠します。そのほか、袴の腰板の内側、袖に通すなど様々な場所に携帯します。居合と云われるゆえんは即座に万力鎖を使用できる携帯方法にあります。

鎖の音が出ないように鎖袋や手ぬぐいに包むなどの方法や風呂に入る時の携帯方法などもあります。また、万力鎖は1本だけでなく、予備を数本携帯している事もあります。

万力鎖の技法

万力鎖術の技法構成は、振り回すなどの「打ち技」、万力鎖を投げる「投げ打ち技」、手首などに鎖を絡めるて相手を投げる「投げ技」、関節を極めたりする「固め技」などがあります。打ち、投げ打ちを表居合、絡めての投げ技、固め技を裏居合と呼ぶ事もあります。万力鎖は常に手の中に納めます。なかでも「五仿(ごほう)の構え」は合掌した手の中に鎖を納め、神仏に祈るような姿勢をとり、「おぼろ月夜の人影の如く」と云われる敵対不動の状態から技を発していきます。

鎖鎌術

万力鎖の並伝として鎖鎌術の技法があります。制定形は5本あり、その他に基本として、鎌の扱い方、鎖分銅の扱い方がそれぞれあります。万力鎖は2尺3寸が常寸ですが、鎖鎌の鎖分銅は6尺から9尺ほどで長い鎖の扱いが習得できます。

江戸町方十手捕繩扱い様について

江戸中期、享保年間(1716年~1735年)、将軍徳川吉宗公の改革により、江戸の町方、八丁堀の与力・同心の十手の使い方として古流三十数流派の技術を統合し「江戸町方十手捕縄扱い様」を制定されました。この十手術を「十手扱い様」と呼ぶのは、三十数流派の十手術からの抜粋であるため、あえて「扱い様」としています。与力や同心は、暇を見つけては、小者(捕者の供をして、主人を助け働く者)を供に、道場に集まり、熱心に稽古していたようです。

破邪顕正(はじゃけんしょう)の形

町方同心が十手を向け捕縛する場合は、黙って跳びかかることはなく、十手を額の上方に垂直にかざし良く見せ、必ず声をかけ公儀の御用である事を示す事になっていました。この十手を示し、命令系統を申し聞かす形を様式化したのが「破邪顕正の形」となります。形は四つの動作からなり、悪魔調伏の呪縛であり、捕方の身を護る護符(自己催眠の意味もある)でもありました。動作の際に心の中で真言を唱えます。

破、下手を垂直に立て、ひたいの上にかざす。「迷故三界城」。
邪、十手を握る右手を外に左手を内に、胸前で深く交差。「悟故十方空」。
顕、交差した次の瞬間、両腕を左右に大きく伸ばしひらく。「本来無東西」。
正、十手の先端を敵の両眼の間につけたて正眼に構える。「何處有南北」。

その後、「阿毘羅吽欠(あびらうんけん)」と唱えます。

十手の制定形

「十手の形」は12形から構成されています。十手となえしを使う「双角(そうかく)の形」は13形、十手となえし、万力鎖、鉤縄、羽織、捕火などを使う「放鷹双角(ほうよううそうかく)の形」は5形となります。

十手の形

制定形の他に、十手形として初伝から免許として分類しています。その他に基本として十手および双角の構えが9種、十手の打ち方が15種、受け方7種などもあります。

早縄の形

早縄は、罪人逮捕の際に抵抗・逃走を防ぐために、縄を使い素早く拘束する方法で、手際よく、怪我をさせないことが要求されました。縄は隠して携行するため、小さく巻き、一個所を引けば解けるように工夫がされており、八字結び、海老結びなどの巻き方があります。「早縄の形」は11形あり、十手で捕りおさえてから絡めます。その他に動いている状態から絡めていく形や、関所等で罪人を引き渡す際の「国渡し」などの形もあります。早縄を絡める際は被疑者の為、巻いた最後に結び目を作らない方法をとり、縛ったのでなく、絡めたとして人権侵害にならないようにしています。

不動明王と「江戸町方十手捕繩扱い様」

捕縛の根本理念は、「邪道をうちやぶり、正しい道理を世の中にあらわし広める」事の破邪顕正をよりどころとしています。十手は不動明王が右手に持つ「降魔の利剣」、捕縄は不動明王が左手に持つ「不動の絹索」を象徴とています。

その他

別伝技法

十手や隠し武器について各地を調査し、指導や交流により中島派に別伝技が多数あります。代表的なものは十手の房絡を使った「十手房絡み」や各地の岡っ引き親分衆たちの十手術、「十手と鎌」や「十手と万力鎖」を両手で使う技法があります。また、公家系のお庭番技法として「手の内術」や「短棒術」があります。

法螺貝

真言宗系の法螺貝の指導もおこなっており、演武会や山などで法螺貝を立てる(吹く)事もあります。