第八話 火の用心

気合、気配。
どちらも「気」が関係していると感じる。

そういえば、風の道場で気について耳にしたことがある。
――風の道場で聞いてみるか。

そう思い、須田は風の道場へ向かうことにした。

山道を歩く。
旅の疲れが体に残る。そろそろ野営地を探す時間だ。

そのとき、かすかに、あの気配がした。
狭い木と木の間を、黒い忍び姿がすっと通り過ぎていく。

須田は急いで後を追った。

少し進むと、すずめ天狗が二羽、木の枝に止まり話している。
須田は慌てて木の陰に身を潜めた。

「半三……久しいの。相変わらず向こうの世界を旅しているのか?」
「まーな。なかなか楽しいぞ」

「辰三郎は境界の里のはずれで何をしているんだ?」
「山火事になるような火種がないか、見回っている」

「そうか。そういえば、人が通るぞ。この時間だ、今夜は野営だろうな」

そのとき、黒い影が急に無言となった。
二羽のすずめ天狗が顔を見合わせ、あっという間に姿を消した。

――気づかれたのか?

須田は静かに野営の準備を始める。
地面をならし、落ち葉を集め、焚火の場所を整える。
火打石で火花を散らし、ようやく小さな焚火が灯った。

火の匂いと、パチパチと弾ける音が森の夜に溶け込む。

辰三郎……そういえば、町火消のような服装をしていた。
山火事を気にしていたのも納得だ。

いろんなすずめ天狗がいるのだな。
あの黒い影は、半三か。

みんな名前に「三」がつく……何かあるのか?

須田は焚火の揺れる炎に目を落としながら、
森の音や風に耳を澄ませた。