万力鎖はお守り

正木流万力鎖術の創始経緯は二説あり、警護の捕具(とりぐ)と魔除けの秘器の2面性があります。

警護のための捕具

撃剣叢談には「大垣藩が江戸城大手門の警備を命ぜられた事に端を発する。利充は、大手門警備中に不意に乱心者が来た場合の対処に腐心し、刀により門前を血で汚す事なく制圧出来る術として万力鎖術を考案した」とあります。

万力鎖は鎖十手の名称もあり、十手、鼻ねじ、万力鎖を捕手の三道具としています。また、正木流万力鎖術には手錠のように相手の腕を拘束して連行する技が数手あります。携帯に便利な捕物道具としての役割もあります。

秋葉権現から賜る秘器

武功論では「利充が60余歳の頃、秋葉権現の霊夢を得て案出した」とあります。また、鎖は秋葉権現から賜った秘器で、掛けておくだけで盗難・剣難除けの御利益があるとして、大垣を通過する剣客や武士が鎖を懇望し、ひとつひとつ祈祷して渡したと云われています。

また、吉田幸平氏の論文「アメリカにおける万力鎖, 大垣戸田藩, 正木流, 正木団之進の研究」によると「授ける場合一々合掌し,入魂して手渡したという,此の伝承者は多く,また魔除けの呪器としても使用され,民俗学的にも使用された」と記載があります。岐阜では玄関や軒下に万力鎖を板に打ちつけて災禍よけに飾っている家が現在でもあるそうです。

万力鎖は正月の縁起物や新築の際に鬼門に向けて棟の上に弓矢を立てる破魔矢(はまや)と同等の秘器となります。

まとめ

万力鎖は捕具と秘器の二面性をもつ小武器であり、現代では護身具や災難除けのお守りとして身に着けると良いのではないでしょうか。ただし、危険な武器としてみなされる事があるので稽古以外での携帯はさけるのが良いでしょう。

コメント